中島 祥文
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中島 祥文 アートディレクター


中島祥文(なかしま・しょうぶん)1944年生まれ。
スタンダード通信社、デザインオフィスナーク、J・W・トンプソンを経て1981年ウエーブクリエーションを設立。
2001年~2011年、多摩美術大学グラフィックデザイン学科教授・学科長。
東京ADC最高賞(一般)、東京ADC会員最高賞ほか受賞。
主な仕事に、ウールマーク、J.P.ゴルチェ、トヨタ・ウィンダム、伊勢丹、カネボウ・モルフェ、AGF・マキシム。
ロゴデザインと広告展開を担当した仕事として、
JR東日本・VIEWカード、サントリー・エルク、AIR DO、渋谷ヒカリエほか。

依頼者とのコミュニケーションが
あるべき場所にあるべき形を生み出す。
ずっと考えている。
答えに行きつくところまで考える。

長い間、アートディレクションを手がけてきた中で、一つ一つの仕事の中でテーマを自分で追求していくというか、場所と時間の変化によって変わるんですけど、朝、起きるときに考えたりとか、急に思いだして、そこで集中するとかね。あと夜は夜であったりとか、考えようとしてる時間はいつも不規則なんですけども、何か課題があってそこが解決してないわけだから、それをずっと答えが見つかるまでずっと考え続けるっていうか。そういう生活しながら考え続けていって、何かそこに行き当たるみたいな感覚で、行きついたときにそれが自分の考えになるというか、そういう感覚に近いですかね。ふと湧いてくるみたいなことはほとんどないですね。やっぱり常に考えてるっていうのが正しいですね。
3年とか5年とか10年とかって、同じクライアントの仕事をやることがあるので。極端に言うとその10年間、その商品のことをずっと考え続けるんですよね。何かタイミングによって考える課題が変わってくるとは思うんですけど、変わったときにそれはそれで集中するみたいなことですかね。
例えばウールマークの仕事の時は、海外旅行でパリに行っても、ウールという素材に対して市場がどういう受け止め方をしているかを考えながらお店に入ったりするんですよね。ショッピングしてるんだけど、今、ウールのトレンドはどうなのかとかね。だからクライアントから課題与えられてなくても、それを見続けるというか、考え続けるみたいなことをしていましたね。仕事としてずっと続いている以上は、常に生活したり仕事してる間のどこか意識の中にウールマークってのがあって、それに何かこう結びつくようなものを探すとか気がつくとかが多いです。
休みの日とか時間とかね、結構そうやって考えている方が自分としては心地いいんですよね。つらいとか苦しいとかじゃなくて、心地いいんですよ。そういうことがなくなると自分でも寂しくなるっていうか。だから嫌な感じは全然なくて、それがむしろポジティブに自分にとって良い精神状態としてもね、肉体的にもいい状態になるんですよね。
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ぶれないブランドであってほしいという願いを込めて。

ユニバーサルフォルムのロゴデザインについては、このフォルムの着想のところで、なぜこうなっていったかのプロセスで言うと、ロゴタイプの書体なんですね。丸本さんの方から、少し前のアメリカのトーンの話を最初にお伺いしているので、そのトーンというのは自分としても納得のできる、自分の好きな世界でもあるので、そこからスタートできたことが良かったと思います。このブランドがこの先どういう位置づけに行くのかということだと思うんですけど、地に足をつけたしっかりしたもの、いろいろなものにぶれないというか、アメリカのその時代にあったロゴが魅力的に感じるとすれば、そういうぶれない良さっていうことじゃないかと思うんですよね。具体的には、その頃にエスクァイアっていう雑誌があって、その雑誌の表紙には必ず強いメッセージとビジュアルがあり、その関係性が非常に魅力的に映ったという記憶があったので、その書体のイメージをアレンジしました。

 

ネクタイをすることが僕の流儀で、
ユニフォームだった。


僕は、巡り合わせで外資系の広告代理店に入っちゃったので、上層部が社長から役員までアメリカ人で構成されていて、彼らの服装がやっぱりちゃんとしてるんですよね。当時はまだそんなに服装がラフになる前の時代なので、ほとんど全員ネクタイをしてるんですけど、自分もその中で役員会みたいなところで話をするときには、一番気を遣っていたのはネクタイですかね。彼らも結構いいネクタイをしてるんですけど、ネクタイぐらいはね負けちゃいけないみたいな感じで、ネクタイを必ずしましたね。ネクタイを褒めることが多いですね、彼らはね。今のクリエイターでネクタイが好きな人ってほとんどいないですよ。多分知る限り、僕が唯一ですね。嫌だと思ったことないですよ。だからどんなに暑くても、プレゼンテーションの時やお客さんに行く時は必ずネクタイをするというのが自分の流儀になっています。仕事の場なのだから、せめてその場を自分で感じながら仕事をした方がいい。それって、ユニフォーム的かもしれないですね。おそらく仕事をしてるという何か緊張感とかを自分のスタイルの中に取り入れたいんですよね。