木工作家 | 高山英樹

木工作家 |  高山英樹

木工作家
高山 英樹 Hideki Takayama

石川県能登出身 益子町在住
文化服装学院を卒業後、都内で舞台衣装や布のオブジェなどを制作。
のちに北米や中米、アジア、ヨーロッパなどを旅しながら、国内では内装や家具
の制作を手がける。2002年に益子へ移住しテーブルや椅子、オブジェなどを制作。建築プロジェクトにも参加している。
カントリーサイドでのDIY生活を楽しみながら、家具やオブジェを制作。作品を国内外で発表。

依頼者との
コミュニケーションが
あるべき場所に
あるべき形を生み出す。

例えば僕の作るテーブル。僕が作品として作ったというよりは、依頼者の思いをちゃんと受け取って、その場所にテーブルを置くことの意味を考えて、作っている。

「自分が作った作品です」みたいなことよりも、そこに存在する意味がちゃんと現れて、依頼者と僕とのコミュニケーションの表れでもあってもらいたいから。作ったからどうぞということではなく、どこに置くのか、どういう思いで依頼してくれたのか、そんな流れをちゃんと踏まえたいなという想いはずっとあるんです。
あるとき、自分がどこに向かっていくのかがだんだん分かってきて。作った家具を納める場所に納めたときに、依頼者が「素敵なものを作っていただいてありがとう」って。そのとき僕は「いいでしょ」って言ったりするんだけど、そんな依頼者との会話のシーンを頭の中でイメージして、その笑顔に向かって作っていく。だから、空間も見させてもらって、見られないときは、データやいろんな情報をいただいて、何かそのシーンみたいなものに向かって作っていって、実際にその空間に収めたとき、そんな感じになっていく事が理想です。

最初はお互いに言葉でイメージしますよね。そこから始まって、ある一定期間、お互いセッションしたり、作業したり、ちょっとした会話が、4〜5ヶ月後に本当に実現するわけじゃないですか。家の中に、本当に何もなかったものなのに、お互いが話し合ったときから生まれた未来を作れるっていうことなんです。イマジネーションですよね。

自分がイメージしていた空間の中に、数か月後自分が入れる。そう考えたら面白いよね、ということを伝えながら進めていますね。居心地のいいところに行きたいんだよね、僕は。自分自身もそうだし、依頼されて納めるところだって居心地のいいところにしてあげたいし。全体がこうなって欲しいよねとか、空間意識をもっとみんなに持ってもらいたいなっていう思いがあるわけです。

移動することで、
新しい自分が見えてくる。

フリーとして依頼されている仕事もこなしながら海外旅行に行き始めた時、人生がすごく明確になったんですよね。それはもういろんなところに行って、4ヶ月ぐらいアメリカとかメキシコとか中米を周って帰ってくるんですけど。一番しっくりきたのはその後に行ったバリ島でした。いろんな場所を周っている中で、自分が子供のときに味わった日本の風景みたいな、すごく癒されて幸せな感覚があったから。そういう暮らしぶりをしながらも、単純に東京とかニューヨークとか、そういうのも知ってるし、でも田舎も知ってる。ちゃんとバランスが取れた生活をしているのが一番面白いなって。

その後東京に帰ったんですが、もうちょっと自分のペースで全部作ったりしてみたいので東京じゃ難しいかなと思っていて。どこだろうって考えていたら益子という町が見つかって、いろんなことを自分で自由にやれるようになった。だから、その旅行がきっかけです。

移動することで、新しいものに出会えるだけじゃなくて、前にいた場所が俯瞰で見れる。自分がどういう人なのかという意識や、どこを目指せばいいのかみたいなことを一生懸命考えるようになる。それって、同じところにずっといるとわかんなくなっちゃうから。移動することって、すごく大事だと思うんです。

暮らしぶりが大切。
その場所を心地よくしたい。

カントリーサイドの景色で一番綺麗だなぁと思うのは、ちゃんと手入れがされている土手の景色。それを僕は文化だと思っています。海外に行ってもそれがすごく綺麗なところって、やっぱり文化度が高いから。工業的になっていくと文化的な部分が薄れてしまうけれど、先進国じゃなくてもすごくちゃんと丁寧に手入れしているところって、やっぱり人としても綺麗なんですよね。だんだんリンクしていく。結局は、暮らしぶりなんですよね。自分も含めて、そこの中にいたい。心地よく暮らしていくところを増やしていくっていう、そういう意識の人が増えてくれるといいですね。